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親の性(セックス)と子ども

親の性(セックス)と子ども

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うちのお父さんとお母さんはセックスなんてしないよ

いつのことだったか、青年期にある若者たちに性意識にまつわる調査が行われたことがあります。その中に、こんな興味深い結果がありました。自分の両親はセックスなどしていないというものです。これは親たちに性行為の回数を聞いたものではありません。いわゆるセックスレスの夫婦について調査したわけではないのです。そうではなくて、若者たちが自分の親のセックスについてどのような意識をもっているのかというリサーチなのです。私も学生たちに聞いてみたことがあります。すると、そのときは、自分の親はそんなことはもうしていないはず、というコメントが少なくなかったような気がします。

すでに青年期を迎えた子どもたちにしてみると、自分の母親がチャタレイ夫人に変貌するところなど想像したくはないのかもしれません。あるいは、父親がアダルトビデオさながらの野獣に変身するなど、考えたくもないのかもしれません。いつものお父さん、お母さんが夜な夜な別人になるなど、想像もつかないのかもしれません。しかし、実際のところ、セックスレスの夫婦が増加しているとすれば、子どもたちの幻滅の回避が調査に反映されたわけではなく、自分の両親にそのような兆候が全く察知されないという、あるがままの家族の現実が反映されているのかもしれません。

けれども、両親の性によって心を痛める子どもたちは少なくないと思います。今回は、この点について触れたいと思います。

父母が忘れてはならない、家屋の構造と間取り

最近の住宅、特に北海道の住宅に言えるのは、気密性の高さです。昔のあばら家でしたら、外気がピューッと室内に流入して、冬は本当に寒かったですね。しかし、いまの住宅は気密性が高いので、外気の流入がほとんどないのはもちろんのこと、屋外の音もシャットアウトされます。防音性にも優れているのです。

では、室内に目を向けましょう。確かに外の音はかなり遮断されて静かです。しかし、家の中の音はどうなっているでしょうか。リビングの話し声や物音が、二階の部屋にいても微妙に聞こえないでしょうか。隣の部屋や、真上の二階の部屋の生活音が、かなり響きませんか。そうです、気密性が高い家の室内は、防音壁などで工夫しないかぎり、家中に音が筒抜けになる可能性があるのです。

もうお分かりのことと思います。寝室で営まれる性行為の際の声や、ベッドがきしむ音が漏れて、子どもたちに聞かれてしまう可能性が高いのです。音が漏れないように工夫したとしても、一体どれほどの効果があるのか定かではありません。むしろ、大丈夫、子どもたちには聞かれていないと、自分自身を安心させるために自分に言い聞かせることが多いのではないでしょうか。

性的存在としての人間

たしか川端康成の『掌の小説』に入っている一篇に書かれていたと思います。それには、自分の優しい母親が鏡台の前で紅をさし、次第に女に変貌していく瞬間がえがかれていました。母親が性的存在に変化して別人になってしまう、子どもにとってその母親は万華鏡をのぞくときのように彩りを変えて行くのです。子どもを慈しむ母親が、男を愛する女になるなどという意味付けは子どもには無理でしょうが、変化は少なくとも察知しているのです。

思春期を境として、やがて子どもたちも性的存在に変化していきます。誰かパートナーを見つけて初めての体験をし、大人になっていくのです。年齢不相応な場合には、おく手だとか、ませてるとか、子どもは大人から散々なことを言われるようです。

10代の妊娠と堕胎は深刻な問題です。こころも、身体も、痛めてしまいます。養護教諭などの性教育は、いまも昔も重要な教育であることに違いありません。しかし、避妊の仕方は教えてくれても、愛し方を教えてくれる授業はないはずです。いつのことだったか、アメリカのある大学で実現したようなのですが、猥褻であると問題視されたようです。この愛し方まで踏み込んだのは、おそらく精神分析学者のヴィルヘルム・ライヒかもしれません。

そのようなわけで、誰かを愛することで、私たちは愛し方を自然に覚えて行くのかもしれません。大人たちに教育されるのではなく。

子どもが両親の性愛を察知するとき

両親のセックスを察知した子どもたちは、どのような反応を示すのでしょうか。様々な反応が考えられます。子どもの発達段階によっても違うでしょう。

家に引きこもってときどき家庭内暴力をふるう思春期の男の子がいたとしましょう。その子が派手に暴れて家具を破壊するのは、その前夜に両親の性愛行為を察知してムシャクシャしたからなのかもしれません。自分がこんなに苦しんでいるのに、親は何て身勝手なエロいことをしているのだという怒りがブチまかれているのかもしれません。

リストカットや薬の大量服薬(オーバードース)を繰り返す、これまた思春期の女の子がいたとしましょう。彼女がこうした行動化を衝動的に行ってしまうのは、いつも決まって親がセックスした翌日なのかもしれません。

思春期以前の子どもたちの場合は、どのような反応を示すのでしょうか。子どもたちは、父親と母親のただならぬ雰囲気を察知すると、一体何が起こっているのかと怯えるかもしれません。子どもはまだセックスの意味を知らないわけですから、お父さんがお母さんをいじめていると思うかもしれません。おそらく子どもが寝静まってから営まれるのでしょうが、敏感に目を覚ます子もいるはずです。また、日本の文化では、子どもが幼いうちは両親と同じ寝室で寝ているはずです。性行為の最中に子どもに声をかけられた経験はありませんか。「お父さん、お母さん、どうしたの」と。

昨夜はただならぬ雰囲気であった両親は、翌朝にはもういつも通り仲良くしています。おそらく子どもはそのギャップを目の当たりにして驚くはずです。口にするかしないかは別として。

こうしたことは大人になって振り返ると笑えるのかもしれませんが、子どものうちは笑えないわけです。みなさん、自分の幼い頃のことを覚えていますか。両親の性について、きっと何か覚えているはずです。自分の子供時代と両親の性について、大人の自分として振り返ってみると、何かためになることが見えてくるのかもしれませんね。

おわりに

わが子を性の対象にしたり、子どもに性交を見せつけたり、親の子供に対する性的虐待・近親姦が話題になることがあります。子どものダメージは甚大であり、とても残念なことです。汝我が子を犯すことなかれ。

しかし、そのような性的虐待とは言えないものの、子どもたちの心に何がしかの傷を残してしまう可能性があるのが両親のセックスなのかもしれません。家族であるかぎりどこにでもある風景なのかもしれませんが、それだけに親として気をつけたいところです。

夫婦が愛し合うのは、とても素晴らしいことです。この記事が性の否定を意味しないことを、最後に付言しておきます。


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